「やっと会えたな、ゾロ」
ずっと言いたかったその一言を噛み締めるように口の端に乗せ、
ルフィはゾロを見てにっと笑います。
ゆっくりと手を差し伸べて、ああやっとだ、そう思ったそのとき、
周りからわあっと歓声が上がりました。
「兄ちゃんたち強いねえ」だの
「ホントによくやってくれたよ」だの
どうやら連中は町の人々にとっても厄介者だったらしく、
それを叩きのめしたルフィとゾロに感謝しているようです。
「どうするゾロ?」
「おまえが派手に暴れたせいだろ」
「あーずっりぃ、それはゾロの方だ!」
などと言い合うものの、何しろこの島には海軍の姿もちらほらあるようで、
あまり派手な騒ぎになると「海賊」としてはちょっと困ったことになります。
「仕方ねえ」
ゾロが刀をしっかり腰に納めるとルフィに向き直りました。
「仕方ねえ・・・な」
ルフィも察したようで、頭の麦わら帽子を確かめるように被りなおし、そして。
「逃げるぞ!」
「よっしゃー!」
2人同時に猛ダッシュをかけて、人々の輪を突破します。
おーいとか待ってーとか、そんな声を後ろに聞きながら、走り抜けたのでした。
* * * * *
2人がようやく止まったのは、島の遥か端。
やれやれとばかりに息をついて、どかりと腰を下ろします。
随分船からも離れてしまいました。
でもさすがに町の人も追いつけなかったようで、
辺りを行き交う人も2人を知らず、目を止めることもありません。
「・・・たく、ひでえことになったもんだ」
不機嫌そうにぼりぼりと頭を掻くゾロですが、そう言いながら口元が笑っています。
それが可笑しくてルフィもけらけらと笑うのでした。
* * * * *
ふっとルフィは目を開けました。
どれくらい時間が過ぎていたのでしょうか。
特に言葉を交わすこともないままでしたが、ゾロと同じ場所で過ごす空気の心地よさに
いつの間にか互いにもたれあって眠ってしまったようです。
日は西の空に傾き、辺りには宵闇の気配が漂い始めていました。
「いっけね、オレたち船に帰らなくちゃ」
2人の時間の終焉を少し残念に思いつつ、
それでも慌しくぱんぱんと腰の砂を払ってルフィが立ち上がります。
ゾロもそれに倣って腰を上げました。
「ああそうだな。・・・で、船はどっちだ?」
「ん〜、多分あっち・・・かな?」
「頼りねえ船長だな」
「・・・ゾロには言われたくないぞ」
そんな他愛もないやり取りを楽しみながら、
2人は「多分船があるらしい」方向を目指して歩き出すのでした。
「今日は楽しかったな、ゾロ」
「ん?何か面白いことあったか?」
「おまえと一緒にいられた」
ルフィはにこっと笑いました。
いつだって思いを伝えるその言葉は直球です。
「そりゃありがたいこった」
ところがゾロの答えは至極簡単で。
ルフィはそれがちょっと面白くありません。
「そんだけか?」
「他に何か言って欲しいのか?」
見返した瞳がにやりと笑うのが、ますます面白くない。
腹立ち紛れに、ゾロからぷいっと顔を逸らしてやりました。
「さっさと行くぞ!」
「へいへい、船長」
そんな仕草に笑いを噛み殺しながら、ゾロが従います。
「で、船はどっちだ、ルフィ?」
「知らねえ!」
「何だ、怒ってんのか?」
「別に!」
おまえなんか知るかとばかりに、ルフィは先に立ってずんずんと歩きます。
でも、背後にはちゃんと自分についてくるゾロの気配。
それに心を弾ませながら、ゾロと一緒ならこのまま夜通し歩くのも悪くないかもな、
そんなことを思ってしまうルフィなのでした。
・・・・・・手、繋ごうか・・・・・・
そう言い出すのは、どちらが先でしょうね。
ENDv
う〜ん、ほのぼのエンドでした〜v
ベストエンドまではあと少し。惜しい!
でもこれも2人きりで一晩中、てエンディングですよね、一応。
さあこの2人は朝までに無事船に着けるでしょうか・・・ね。
なお、この話は最初にここにたどり着いたとご連絡いただいた
Kaiさまに捧げます。
Kaiさま、受け取って下さってありがとうございました♪
また遊びにいらしてくださいねv