Ten Titles


血刀

ゾロの誕生日で10のお題


描写注意




「入れてえんだ」

時々ゾロはこんな言葉を投げつけてくる。
抱かせろというほど強引でもなく、シようぜというほど軽くもなく、
身も蓋もない、実に即物的な物言いでゾロはルフィを誘う。
最もルフィにしたところで、元々が男同士のSEXに色気だのムードだのを求めるつもりはない。
だから「入れたい」と言われたら、「いいぞ」と一言だけ答えて頷くのだが、
あっさり受け入れるものなんとなく癪なので、いつもボディーブローを一発、言葉と一緒に返すことにしている。


ゾロのことは好きだ。
男同士で体を重ねることにも、
まして自分が受け入れる立場であることにも、ルフィに抵抗はない。
それは、たぶん相手がゾロだからなのだろうと思う。
きつく抱きしめてくるがっしりとした腕も胸も、
耳元で名を呼ぶ熱いかすれた声も、
ゾロの与えてくれる全てに、体はしっかりと応えてしまう。

そしてまた、「入れた」あとのゾロの表情がたまらないのだ。
体を繋げてようやく何かから解放されたように、はぁっと大きく息をつき、
穏やかな顔で見下ろしてくるゾロの顔はすごくいい。
最初のころは訪れる衝撃をやり過ごそうと固く目を閉じていたが、
何度目かのときにふと気付いてしまってからはもう目が離せなかった。

「痛ェか、ルフィ?」
今回も目が合ってしまった。
ゾロが少しだけ困ったように笑う。
「いや、へーきだ」
正直ちょっとばかり痛かったが首を振った。
「悪ィ」
「そう思うならさっさと終わらせろ」
「それは断る」
もっとおまえの中にいたいから。
緩んだ顔でそう言われ、恥ずかしいヤツと苦笑した口は下りてきた唇に塞がれた。

受け入れる体を気遣って、ゆっくりと解してくれる場合もあるが、
たいていゾロは慣らすのもそこそこに、すぐさま入り込んでくる。
それはゴムの体でも少しばかりキツい。
しかも一気に身を送り込んできたかと思うと、しばらくそのままじっとしていて、
それがまた結構ルフィには応えるのだ。
すっかりその気になってしまった体は早く先に進んで欲しくて、
身の内からの熱にじわじわと焦らされるのに、
ゾロはその感触をじっくりと味わうかのように、ルフィを抱きしめたまま動いてくれない。

「ゾロ…」
「気持ちいいな、おまえ」
咎めるつもりで呼んだのに、そんなふうに優しい声で笑うものだから、
さっさと動けなんて怒れなくなってしまう。
「…なァ…ゾロ…」
結局最後はどうしようもなくなったルフィが懇願するのがいつもの道筋。
今日もゾロはふっと嬉しそうに笑って、ようやく律動を始めてくれた。

「おまえの中は落ち着くんだよ…」
熱い息の中にゾロの声がくすぐるように囁いてくる。
「そりゃ…よかった…な」
悔しいことに返す言葉も切れ切れだ。
熱に浮かされ霞む目に、壁に立てかけてある3本の刀がちらりと映った。
かたかたと、赤い鞘の刀が小さく震えている。
あれは…鬼徹だ。
一番ゾロのことを好きで、多分とてもゾロに近い…妖刀。
鬼徹の手入れをしているゾロを見たことがある。
すらりと鞘から抜かれた乱刃の刀は、外の気に身を晒してきぃんと鳴り、
その全身から放たれる狂気にも似た激しい気に圧倒された。
妖刀の名に恥じることのない、激しい刀だ。
ルフィには何かを強く求める鬼徹の声が聞こえたような気がした。
それが斬り倒す相手か、再び自分を納めてくれる鞘か、どちらなのかは知らない。
それでもゾロの手の中で、鬼徹はおとなしくしている。
斬らせろ、前に進ませろと呻きながら、ゾロに握られることを心地よく思ってもいるようだった。
ゾロと鬼徹はどこか似ている。
必要ならばこの世の全てを斬り捨てて血塗れになることも厭わない鬼徹。
立ちふさがる敵がいようとも決して足をとめることなく前に向かって歩み続けるゾロ。
傷つき疲労し、たとえどこかで狂気にも似た思いに取り付かれたとしても、決して後には引かない両者。

鬼徹が鞘やゾロの手中で、暴れる衝動を抑えるように、
だとしたら、ゾロが息をつく場所はどこだろう。
「入れてえんだ」
そう言ってゾロはルフィを誘う。
たいていは敵と一戦やらかして返り血を纏った後だ。
ギラギラとした目を落ちつか無げに動かし、
ルフィの許しをもらった後は、我慢できないとばかりに性急な動きでゾロはルフィに身を沈める。
だが激しく求めるのはそこまでで、入りこんだ後のゾロは急に静かになる。
まるで、今まで散々暴れてたくせに鞘に納まるなり、鳴りを潜めた妖刀のように。

オレはおまえの鞘かよ。
そう苦笑したくなるが、それならそれでも構わないとルフィは思う。
ゾロの体の欲も、夢も野望も。人を斬った後の狂気ですら。
その全て、何もかもを受け止めてやれるのは恐らく自分しかいない。
だから好きなだけ求めてくりゃあいい。
それほどにオレたちは近いのだと、体と心全てで感じられることに喜びを覚える。

ただし、体の負担は別だ。
実際痛いしやられっぱなしなのも面白くないので、下腹にぐっと力を入れてみた。
「…っ、てめっ…」
思わず身を引いて、ゾロが小さく呻く。
「なんだ…もう降参かよ…早ェなゾロ」
早いという部分をわざと強調してにやりと笑う。
「おまえが…んなことしてくるからだろが」
ちっとゾロが顔を顰めたのでざまあみろと思った。
「もうムリならいいぞ、ゾロ?」
「馬鹿言え、まだまだこれからだ」
「へえ…」
「最後までちゃんと付きあいやがれ、船長」
「もちろん」

言い終わるなり始まった激しい動きに喘ぎながら、ルフィはこみ上げる笑いを隠し切れない。
最後まで付き合いやがれ、か。
望むところだ、ゾロ。
おまえという血に塗れた刀の行く末、オレがとことん見届けてやる。

ルフィは喉の奥で笑うと自ら手を伸ばしてゾロを抱き寄せた。

 -- end --

           

2005-12-07

ゾロはきっと遅い気がします。

意味がわからなくても、何が?とか聞かないで☆