10Titles


甘い悲鳴

微エロで10のお題

<注意>
この話はもちろんゾロルベースですが、ルフィは登場しません。
なおかつゾロ×女性という話です。
それでも大丈夫だという方のみ、スクロールしてご覧ください。














男と女の生理が違うことはわかっているけれど、それでもコトの後にさっさと立ち上がって自分だけ身づくろいをする男はなんて腹立たしいものか。
見慣れた腹巻をはめ最後に3本の刀を手にする無言の後姿には、つい今しがたまでの痕跡は全く感じられず、 いまだ全裸でベッドの中にいる自分がバカみたいだ。
ここで飛び起きてその背を蹴り飛ばしてやろうか、そんな衝動に駆られる。
自分たちの間には、愛だの恋だのといったわずらわしい感情は何も存在しないのに。

昔から男と自分の関係は変わらない。
あくまでも同じ船に乗る「仲間」。
たまにこうして体を重ねるだけだ。
ただそれは、性的な欲望、というだけでもないような気がする。
ふと他人の肌が恋しくなったとき、お互いが手を伸ばすにはちょうどよい距離にいたということなのかもしれない。
愛してなんていない、それは本当だ。
けれど男の体温とその重みが今でも体に残り火のように燻っている。
だから、こんな事後に心が微かな温もりに縋って情けなくも甘い悲鳴を上げてしまうのが、女は少しだけ切ない。

「ねえ」
まだシーツを纏っただけの格好でうつ伏せたまま、ドアノブに手をかけた男に顔だけ向けて呼び止める。
「あなたは愛してない女でも平気で抱ける男なのね」
男の動きが止まったが別段振り向く気配はない。
彼を困らせたいわけでもないし(困るとは思えないが)、もちろん答を期待したのでもない。
ただ最中の貪欲さに比べ、事後の淡白さがあまりにも身勝手に思えたので、嫌味の一つも言ってやりたかっただけだ。
甘い言葉も軽いキスすらも…あったらそれはそれで厄介なのかもしれないが、一切ない関係。
とはいえ、女は雰囲気に酔うもの。
嘘でもいいから少しくらい気を利かせれてくれればいいのにとも思う。

「そうだな」
意外にも答が返された。男の声が、低く囁くように耳朶をくすぐる。
「おまえが愛してない男にでも抱かれるようなもんだ」
「なにかしら、それ」
いつも直な彼には珍しく含みを持たせた物言いに些かむっとしながら、 それでもなにが可笑しかったのか、思わずくっと喉が鳴った。

「あたしはあなたを好きよ」
「長い付き合いだからな」
「たとえ、たった一人しか見てない男だとしてもね」
「……」
図星だったのか、それきり男は何も答えなかった。

馬鹿な男だ。
出会った時からその目はたった一人の存在しか映していなかった。
眩しそうに、嬉しそうに、
どんなに月日がたとうとも、男は常に変わることなくただ一途にその隣にいる。
「さっさとキスでもすればいいのに」
「うるせぇ」
「抱かせろって言ったところで、嫌がらないと思うけど」
「黙れ」

未だに男は本当の思い人には手を出せぬまま、黙々と、否悶々と日々を過ごしている。
呆れるほど我慢強い忠犬ぶりだ。
「もう行くぞ」
よほど会話に苛ついたのか、珍しく声をかけながら男はノブを回した。
「ねえ」
本当に出て行く前に急いでもう一度呼び止める。
「ねえ…いっそ、子供でも作らない?」
あのコには無理だけどあたしならできるわ、
そんな意味を言外に込めて、妖しい誘いを口に上らせてみた。だが、
「馬鹿言え」
案の定、軽く鼻で笑いながら一蹴されてしまった。
おまけにそのまま出て行くかと思いきや、
男はそれはそれは誇らしげな表情でこちらを振り返ると、要らねえよと高らかに宣言したのだ。


「あいつとは、いくらでも未来が作れるからな」


照れも迷いもない、厚かましいほどきっぱりとしたその一言に呆気にとられた隙に、男はさっさとドアの向こうに消えた。
なによ今の…。
呆れるあまり思考が停止した頭でゆっくりと、彼のセリフを反すうする。
もしかして…惚気?
悔し紛れにぼんと投げつけた枕がドアに跳ね返されてその場に落ちる。
そんな様を目にしたら馬鹿馬鹿しくなってきたので、ふんとばかりに再び毛布の中に潜り込むことに した。

「未来が作れる」
それはすなわち伝説にまみれた未来だ。
男はそう言ったけれど、作ろうなんて思わなくても伝説の方が勝手に彼らを追いかけていくに違いない。
海賊王と大剣豪。
彼らが共に歩き続ける限り、その後ろには数限りない嘘のような本当の話がいくつも残されていくのだろう。

それはそれは子沢山で賑やかな家庭ですこと。
シーツがひやりと素肌に触れる感触に軽くふるりと身を震わせながら、皮肉交じりにそう呟いて、
女は一人、目を閉じた。



 -- end --

           

2006-03-01

女はナミでもロビンでも、別のキャラでも(?)どうとでも。
もちろんあなたでもOKですv
でも船長には敵いませんから。なんちって。