微エロで10のお題
海賊船としては小さくても、わずか7人の少数海賊団にメリー号の広さはちょうどよい。
だが、それでも時々やっぱり狭いなと感じてしまうことがある。
若い健康な男がごろごろと乗りこんでいるこの船のこと、
何かの拍子に、男連中が「処理している最中」にうっかり出くわしてしまったときなんかがそれだ。
キッチンやトイレのドアを開けかけてその向こうから聞こえてくる、擦れる音とか抑えようとしている声とか、
そんなあれこれを含む「その」気配に、慌ててその場を離れたのは一度や二度ではない。
そもそも男部屋と女部屋自体が壁一枚しか隔てられてないのだから、
あちら側にしたって「処理場所」には困っているに違いないといっそ気の毒にすらなる。
とはいえ、ナミにとってはたかがその程度のこと。
誰の何を見たって顔色を変えるほど初心ではないし、共同生活をしている以上ある程度は仕方ない。
船上で禁欲生活を強いられる、哀れな男の生理。
まあ、同年代の女に見られたときの相手の心理を考えて、ここはこちらが一応気を遣ってやるべきなのだろうと思う。
自分で自分を慰める。
それは男に限ったことではないけれど、幸か不幸か今のナミには全く必要ないことだった。
戦闘時にはいざ知らず、航海に関しては全く能の無い連中を引き連れての、命がいくつあっても足りない旅。
その進路のすべてが自分の肩にかかるこんな気を張った毎日では、はっきり言って性欲に回す気力も体力も残っていない。
それでもこんな充実感を得られる日々は、実はとても幸せなことなのだと、ナミとしては思っている。
*****
先に休んだロビンを気遣って、幾分灯りをおとしたランプの下、今日の航海日誌を書き上げてペンを置いた。
静かな深夜の船内。
隣の部屋からは…今日も聞こえてくる、音。
何かが擦れあう音と独特の忙しい息遣い、そしてそっと囁く声が、…………2つ。
いつの頃からだろう、アイツらが互いに触れ合うようになったのは。
これが互いを慰めあうだけの行為だったとしたら、きっと今でも理解できなかった。
男同士何をやっているんだか、と蔑みさえしたかも知れない。
でも。
アイツらがそうするのは、深く、互いの心の奥から求め合っているからだと、それがわかるから、
ナミはむしろ微笑ましい思いすら抱いて、漏れてくるその声に耳を傾ける。
隣の部屋で二人は肌を重ねる。
互いの名を呼んで、
互いに高めあって、
深く深く結びつこうとしている。
その行為を羨ましいと思う。
ただ、女の体を持つ自分が彼らとそうなることは、却って難しいのかも知れないと、なんとなくそんな気がするのが少しだけ悔しい。
襟元から服の中にそっと手を忍ばせてみる。
そこには女の象徴である柔らかな膨らみがあった。
指先でそっと撫でるように触れる。
指を動かして、軽く揉むように。
その優しい感触が心地よいと思った。
ただそれは性的な興奮ではなく、むしろ幼い頃に触れた義母の「おっぱい」の懐かしい記憶が呼び起こされたせい。
18にして、自分が女としては落ち着いてしまったようで、ナミは苦笑する。
けれど、この船にいる今、自分にとって「女」であることは、たいして重要ではない。
この船で大切なのは……。
「ナミ!」
目を閉じれば、あのときのルフィの声が蘇る。
「おまえは俺の仲間だ!!」
聞こえてくる、真っ直ぐな言葉。
耳を塞いでもその声はナミの内側から体の隅々にまで響き渡る。
「ナミ!」
いつだって聞こえてくる、その声。
仲間だと自分を呼んでくれた、大好きな、ルフィの声。
目を閉じて身を委ね、そしていっぱいに満たされる。
深夜で一人行う密やかな行為に、全身で酔う。
もしかしたらこれが自分の自慰行為なのかもしれないと、
揺れる明かりの下で、ナミは小さく笑った。
-- end --
2005-05-31
微エロ・・・になりましたでしょうか?
気をつけたのですが自慰ネタ(?)に引かれた方がいらっしゃいましたらすみません…。
なお隣の部屋のCPは貴女のお好きにご想像ください(笑)。