微エロで10のお題
引きずるように連れて来た体を、乱暴に風呂場に放り込んだ。
「脱げ」
単刀直入な言葉は拒否する余地を与えない。
ルフィはゆっくりと服に手をかける。
「早くしろ」
まるで引きちぎるようにして、ゾロはルフィのシャツをむしり取った。
「じっとしてろ」
次の命令を下されたルフィは全裸のままそこに立つ。
ばしゃんという幾分乱暴な水音が風呂場に響き、その後勢いよく水をかけられたルフィがぶるりと頭を振るう。
ぷは、と息を継ぐ間も与えず、手桶に次の水を掬ったゾロがすぐさまそれを頭からぶっかけた。
「ゾ、ゾロ・・・ちょっと待・・・」
「うるせぇ」
ばしゃん。また水が。
続け様にかけられて、ぽたぽたと前髪から滴る水すら拭えずにルフィはただはあはあと忙しない息をする。
「ゾロ・・・」
「何だ」
「おまえも洗え」
「おれはあとでいい」
ぶっきらぼうな言葉とともにまた水をかけた。
ゾロは風呂場に備えられた棚からタオルを乱暴につかみとり、石鹸を泡立たせるとそれでルフィの体を擦り始めた。
その手にも容赦はない。
ごしごしと、体に残るかすり傷にもいっこうお構い無しに擦るので、ルフィが微かに呻いて身を捩る。
嫌そうに顔をしかめたが、ゾロの手を妨げるような真似はしなかった。
どうせ止められないと諦めていたのかもしれない。
ようやく息の整ったルフィにまだ身動きを禁じたまま、ゾロは手を動かし続ける。
ルフィはおとなしく為すがままになっていた。
体のあちこちについた傷口の血が乾いて固まっているのに、時折眉をひそめながら、ゾロは無言でルフィを洗う。
狭い風呂場には様々な匂いが篭り、息が詰まりそうだ。
石鹸の人工的な香りに加えて、血と酒と埃の混じった匂いがゾロのシャツから強く漂ってくる。
散々殴られた。
酒もぶっかけられた。
埃まみれの床に倒された。
そして、自分たちの夢を笑われた。
だが、そのどれもたいしたことではない。
所詮足元しか見てない奴らに、自分たちと同じものを見て欲しいとは思わない。
ルフィが命じるまでもなく、馬鹿馬鹿しさに刀を抜く気にはならなかった。
船に戻ってナミには散々に怒られたが、ゾロは構わなかった。
ルフィの体を洗い続けているうちに少し気分が落ち着いたらしい。
「ゾロ」
「何だ」
自分でもいつもどおりの声が出たと思う。それを感じてルフィもほっと息を吐いた。
「なあ、あいつらやっちまいたかったか?」
「このケンカは買うなっていったのはてめえだろうが」
手を止めぬままゾロは答えた。ルフィの顔は見ない。
「だってあんなつまんねえ奴らやったらゾロの剣が汚れるだろ?」
「気遣いありがとよ」
ゾロはルフィを上向かせて首筋を洗う。
すっかり泡まみれになったルフィがくすぐったそうに、うひひと笑いながら首をすくめた。
それをほらと手を伸ばさせて腕と脇を洗う。
少しずつ円を書くようにしっかり擦る。
さっきまでの痕跡をわずかでも残したくなかった。
喧嘩を買うつもりは毛頭なかったが、違う意味であの場にいた奴らを全員ぶった斬ってやりたいとは思った。
あいつらはその目でルフィを犯した。
それが許せない。
下卑た視線を、舐めるように、値踏みをするようにルフィに向けた。
これが3000万ベリーの賞金首か、ただのガキじゃねえか。
そんな声すら耳に入ってきた。
ほそっこい腕、薄い胸板、子供のようなあどけない表情に見事に騙された奴らは、
その魂に宿る大いなる力を何一つ知らないまま、あわよくばその体を蹂躙したいとすら思っていたかもしれない。
奴らの視線に散々に嬲られ犯された体を、ゾロはただ一心に清める。
無意識のうちに手に力がこもり、ルフィの胸を、腹を、擦る。
尻を、足を、手が辿る。
痛ぇよと咎める声も無視した。
「てめぇも簡単に犯されてんじゃねえ」
思わずそう口にしたらはあ?とルフィが首を傾げた。
「オレは誰にもそんなことされてねえぞ」
ああそうだと頷いた。
本当はわかっている。
あの程度の奴らの視線がどれほどのものか。
たかだかあんな小物連中に、ルフィは毛の一筋ほども汚されたりはしていない。
本当にルフィを犯していたのはゾロだ。
すえた匂いにむせ返るような酒場で、その場にいた全員の嘲笑を浴びながらルフィとゾロは2人並んでいた。
殴られ蹴られながら、ルフィは時折にっと笑ってゾロを見る。
そんな顔を向けられるたびに、ゾロは自分の体がかっと逆上せるように熱くなるのを感じた。
高みだけを遠く見つめるその汚れない魂。
誰も踏み入れたことのない、広大で清浄な世界に自分の足跡を残そうとゾロの意識はその全てでルフィに絡みついた。
離すまい、逃がすまいと、力いっぱい抱きしめてその中に入り込もうとした。
それはまさに処女を犯す感覚だ。
今もこうして直に触れながら、その裸体を目の前にしながら、
ゾロは頭の中でずっとルフィを犯し続けている。
ごしごしと、隈なく洗いながらルフィの全身を泡で覆い隠した。
自分が汚した体を清める意味を込めて。
そしてこれ以上自分の視線でルフィを犯さないように。
だがそのあとゾロは動けない。
「ゾロ?」
ルフィが首を傾げた。
洗い終わった泡を流そうと、水を汲みかけた手桶を手にしたままゾロは固まっていた。
この泡が流れ、再びルフィの体が眼前に晒されたら、自分はどうなってしまうだろう。
「ゾロ?」
訝しがるルフィの声がどこか遠くから聞こえる気がした。
手を伸ばし、早くしろと言わんばかりゾロから手桶を引ったくって、ルフィは自らちゃぽんと水を汲む。
「もういいだろ、ゾロ?」
尋ねながら、手桶は傾けられた。
落ちる水に、泡が流されていく。
まもなくルフィを包んでいた泡は完全に消える。
どうする。
どうなる。
「知らねえぞ、てめえ」
呟いてゾロはルフィの体にゆっくりと手を伸ばした。
-- end --
2005-05-13
空島へ行く前の酒場でのゾロル名シーン後です。
散々書き尽くされてるんだろうな〜と思いつつ、やはりここにはそそられてしまいますvv
それにしても「犯す」と言う言葉をこれだけ連呼したのは初めてですねぇ…