微エロで10のお題
わざと荒っぽく、後ろ手に風呂場のドアを閉めた。
ばたんと大きな音が静まり返った真夜中の船内に響く。
一人きりになった途端どっと体中の力が抜け、ドアにもたれたままずるずると体が下に沈みこむ。
そのままうずくまり、膝を抱え、どれくらいの間そうしていただろうか、
ルフィはようやく顔を上げた。
「風呂、入らねぇと…」
誰に言うともなく呟いて服にかけた手がそのまま止まる。
指に触れたのは、すでに乾ききってぱりぱりとした感触。
体や服のあちこちに飛び散ったそれはゾロの名残・・・。
「ひでえよな…アイツ…」
思わず苦笑した。
今夜の見張り番だったゾロに、「皆が寝たら来い」と誘われた。
誰もいない深夜の甲板。
約束どおり訪れたルフィを、ゾロはいきなり抱きすくめ「これからヤる」と掠れた声で一言だけ告げた。
切羽詰った顔と声に背筋が疼いた。
ちょっと待てと止めたし、抵抗もした。・・・もちろん無駄であったけれど。
その行為の意味はルフィだって知っている。
ただそれが男同士の自分たちにどう適用されるのか、そこが疑問なだけだ。
案の定、乱暴にルフィの体を押さえつけるゾロには、優しく愛を囁く言葉も丁寧な愛撫も存在しなかった。
服を簡単に肌蹴させただけで、ゾロは一方的にルフィの体を弄り、開き、欲望をぶつけてきた。
とにかく早く奪い取りたい・・・背後から伝わるそんな歪んだ欲望にルフィは恐怖すら覚えた。
あんな余裕のないゾロを見たのは初めてだった。
容赦なく幾度も突き上げられた体は、あちこちがぎしぎしと悲鳴を上げている。
「痛ェ…」
両の腕を体に回して、労わるように自らを抱きしめた。
思わず呟いた痛みは、体のものかそれとも心か、自分でもよくわからなかった。
服の前を捉えていた手を外すと、ルフィはするりと手を忍ばせて自らの胸にそっと触れた。
さっきまでゾロの手が散々触れていた自分の体。
ゾロの無骨な手は体のあちこちを余すところなく這い回り、激しくルフィを高めていった。
その動きを思い出しながら、ルフィは手を自らの下半身に伸ばす。
ここにもゾロの手は触れた。
乱暴な手つきで幾度も幾度も触れて、ルフィの雄を開放した。
そっと手を伸ばし、自分で軽く刺激を与えてみる。
ぞくりとした感覚が走り、ルフィは思わず目を閉じた。
だが足りない。
ついさっきまでゾロに与えられ続けた感覚はこんなんじゃなかった。
決して優しい動きではなかった。むしろ乱暴で性急で、申し訳程度の触れ方だ。
痛くて、こんなのは嫌だと思うのに・・・
ゾロの手が触れた、それだけでルフィの体は高まってしまったのだ。
ゾロは背後から圧し掛かる体勢でルフィに入り込んできた。
たぶん自分の顔はゾロには見えなかっただろう。
よかった・・・と思う。
ゾロには見られたくなかった。
嬉しくて、嬉しくて、気が狂いそうになるくらい、
切れるほど唇をかみ締めて、ゾロの名を呼びたい衝動を必死で堪えていた自分の姿を。
唇を舐めると、噛み破った傷から鉄の味がぴりりと舌に染みた。
だがそうでもしなければ、きっとルフィはなりふり構わずゾロに懇願していただろう。
もっとおれを抱いて
もっとおれを見て
もっとおれを愛して
もっと…ゾロ、と。
そんな自分は嫌だった。
ゾロが自分を単なる仲間としてだけで見ているのではないことは、とっくに気づいていた。
簡単だ。
何故ならルフィも同じだったのだから。
ずっと同じ思いでゾロを見てきた。
初めて出会った海軍基地で、ルフィの心に焼きついたゾロの強い輝き。
眩しい・・・けれどとても綺麗だ。
そう思ったときにはもう目を離せなくなっていた。
ルフィは海賊王を目指す。
そしてゾロは世界一の剣豪を。
お互い胸に刻んだ夢に向かって共に進み、
やがて訪れる夢を叶えたその先でも、2人は共に並んで立つ。
それはなんて甘美な図なのだろう。
思うだけでずくずくと、体の奥が蕩けてしまいそうだ。
だが。
だからこそルフィは、ゾロとどこまでも対等でいたいと願った。
好きだの、まして抱きたい抱かれたいだの、そんな関係は自分たちらしくない。
自分にも他人にも厳しい、強いゾロ。
そんなゾロの隣にいるためには、ルフィはさらに強くなくてはならない。
いつでもしっかりと両の足で大地を踏みしめたち続ける。
ゾロへの思いに心なんて乱されないくらい強く強く…。
それは矛盾だ。
ゾロが好きだから、好きだという思いを抑えるなんて、何だかヘンだと自分でもよく分かっている。
でもその葛藤を越えて、どこまでも強くなって、
そしていつか共に高みに立ったその時にこそすべてをゾロにぶつけよう、
ルフィはそう思っていたのに。
バランスが崩れる瞬間は、それよりずっと早くやってきた。
崩したのはゾロだ。
ゾロは意外に弱かった。
ルフィを船長と慕う仲間が増えるにつれ、内心はどうやら焦っていたらしい。
変わっていく状況に焦り、いろんなものを見誤り、
結果、こんな無理やりな形でルフィを捉えようとした。
「バカだな、ゾロ・・・」
こんなことで心を捉えられるはずもないとわかっているだろうに。
けれど煽ったのはルフィだ。
『夜になったら来い』
掠れるような声で耳元に囁かれたゾロの言葉に予感を覚えた。
追い詰められた目がルフィを誘い、そしてルフィは気づいていながらそれに乗った。
翌朝「悪ぃ、寝ちまった」とそう言って頭を掻けば、「仕方ねェな」と苦笑を返したゾロと共に
またいつもと変らない朝を迎えられたはずなのに。
欲望を吐き出し、ようやくルフィを放したゾロの顔は、哀れなほど凍りついていた。
だから「気にすんな」と軽く声をかけてやった。
ゾロが何か言いかける前に風呂に入ると立ち去った。
一人残された甲板で、今ゾロは一体何を考えているのだろうか・・・。
思い出したように風呂桶に近づき、ルフィはシャワーの栓を捻った。
すでに火は落としてある。
冷え切ったそれは湯ではなくすでに水と呼ぶ方がよかったが、構わずルフィは浴び続けた。
胸を、腹を、内股を、しっかりと擦ってゾロの欲を洗い流す。
何の痕跡も残さぬように。
もう間近い朝にはいつもと同じ顔で仲間たちの、いやゾロの前に出られるように。
そんなことは無理だと心のどこかで思いながら。
ゾロの痕跡はしっかりと体にも心にも刻まれてしまっていることに気付きながら、
それでもルフィは、ごしごしと身を洗い続けた。
-- end --
2006-06-22
とある18禁なルフィ受本に書かせていただいたお話の続きのような感じです。
もちろんこれだけでも意味が通じるように気をつけましたが、わかりにくかったら申し訳ありません。
少しは微エロっぽくなったでしょうか?
イタい感じもしますが、結局は両想いです。
どうせこのあとちゃんと思いは通じ合うんです、きっと。(すでに傍観者)