確かな明日を

勝手についてきたその2人組をゾロは案外嫌いではなかった。
始終なんだかんだ煩いのには閉口したが、どちらも気の良い奴らでゾロのあれこれに気を配って「兄貴兄貴」と慕ってくる。
剣の腕なら誰にも引けをとらないが、ごく普通の日常生活を送る上で多少不安のあるゾロにとって、 一応一般人の部類に入る2人がいれば、とりあえず迷子になっただの 妙な輩と一悶着しただのと言った必要以上の厄介ごとが舞い込んでくることは無かった。



だが。
「ねえ、兄貴、ちょっと見てくださいよ。この手配書」
「うおー、300万Bですぜ。例えばこいつを捕まえたとして・・・買えるのはあれとあれと・・・」
彼らのこんなやり取りは嫌いだった。





例えば。


何故そんな言い方をするのだろう。
ここで考えていても金は手に入らない。
さっさと捕まえに行けばいいではないか。





そんなセリフは前にも吐かれたことがある。
「ねえ、例えばあなたがここに残ってくれたとしてよ・・」
ほんの2,3度寝ただけの女が、甘えた声音でそんなことを口にする。
その女に惚れれば残るだろうが、自分にそんな気はさらさら無い。
胸の中に湧き上がる苦々しい思いに我慢ならず、勝手に決めるなと怒鳴りつけ、それきり会うことはなかった。




例えば。


その言葉は未来を描く。
ただし頭の中だけで。






例えば世界一の大剣豪になったとして・・・


馬鹿馬鹿しい。
誰がそんな言い方をするものか。
なったとして、じゃない。自分は必ずなる。
そのために日々鍛錬に明け暮れ、命を削るような思いで刀を振るっているのだ。






俺は海賊王になる


磔場で出会った目の輝きが印象的な少年は、確かな口調でそう言った。
叶えるには大きすぎるほどの途方も無い夢を躊躇いもなく口にするその少年にゾロは魅かれた。
夢が現実になる日が必ず来ると信じて疑わない。
自惚れてるのではない、今の自分にはそれがまだ遠いことをちゃんと知っている。
それでいて、例えばいつかなったとして・・・などとは言わない。
その潔さに自分と同じ匂いを感じた。




だから自分も口にする。




俺は大剣豪になる


その言葉に少年がにっと笑った。




世界一の大剣豪。
いいねえ、それくらいなってもらわないと俺が困る。




今の自分にはまだどれくらい先にあるかもわからない大いなる夢。
だが少年は、無茶なとも、馬鹿なとも言わず、当然のように受け止め笑った。






俺は海賊王になる
俺は大剣豪になる
そして
俺達は手を携えて、共に未来を歩く








見交わす目と目がその言葉を誓い合う。






――それはいつか必ず手に入る、2人の確かな明日――


= 終 =


また出会いネタですみません(汗)
しかも淡々としすぎ。
もっとラブラブ書きたいので、どうにも物足りない私です(苦笑)。




2004.10.4

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