STEP 〜踏み外し〜


一応、表にある「STEP」の続きだったりしますが、読まなくても支障ありません(苦笑)
ウソップが仲間になった祝宴後の翌朝の話です。





それは俺、ウソップ様がこいつらと共に海賊を名乗って船出した翌朝早くのことだった。
昨日演じた死闘の疲れもあってすっかり熟睡してた俺だが、ごそごそと何者かが動く気配にふと目が覚めた。
薄目を開けてそっと辺りを窺えば、隣のハンモックではルフィが無邪気に大口を開けたままいまだ夢の中爆走中。
てことはゾロか。
何やってるんだ?とかけようとした声を思わず喉元で止めたのは、俺の頭の方から聞こえるただならぬ音のせい。


規則正しく何かが擦れる音。
はっはっと吐かれる短い息遣い。


え・・え・・これって・・?
暗闇に慣れてない目のせいで今ひとつはっきり見えなかったが俺も男だ、心当たりが無くは無い。
朝っぱらから1人で起きだしてすることと言ったらやっぱりアレ・・・男の生理ってやつだろ?
船の上だし、そりゃ溜まるものは溜まるのはわかる。
しかしいくら何でも遠慮がなさすぎる行為に俺は少々呆れた。
少なくとも他に同宿者がいるわけだから、いくら男同士と言ってももうちっと気を遣っても良さそうなものだ。
後で、これから仮にも運命を共にする仲間へのマナーを教えてやることにしよう。


とは言え、さすがにアレの最中に気づかれたのではゾロも気の毒だし、俺だってそんな気まずいのは嫌だ。
そう思い、見てはいけないものに出くわしてしまった俺は毛布を引張り上げ(それだってゾロの邪魔をしないようにできるだけそっとだ)、 もう一度眠りの中に逃げ道を求めることにした。
気遣い溢れる俺様に感謝しろよ、ゾロ。



そのときだ。
俺の隣から、ばさばさっと元気よく毛布が跳ね上げられる音がしたかと思うと、続いてふあ〜〜、といともお気楽な欠伸の声。
ルフィが目を覚ましたのだ。
やばい。
ゾロはまだ終わっちゃいない(と思う)。
おい、とルフィを止めようとしたがその間もなく
「おおゾロ、今日もヤってるのか」
ルフィがあっけらかんと笑う。

「いっつもよくやるよな」
「ああ・・もう少しで終わるから・・・待ってろ」
息を弾ませながらゾロが和やかに答えた。

なんだこの普通の会話は!?
これって・・・。



慌てて飛び起きた俺はそこで
よおウソップとにこにこ笑うルフィと
腕立て伏せ1000回のノルマを終えた汗まみれのゾロの姿を見た・・・。




これが俺の新しい仲間たちなのだ。
嗚呼、大いなるキャプテン・ウソップ様の今後の人生に乾杯・・・。




= 終 =






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打ち明けますと、悲しいことにこれは実話です。
旦那の同期の友人Sくんが、出張で初めて一緒に泊まった翌朝、 枕元から聞こえてきたただならぬ音に死ぬほどびっくりしたと、後日涙ながらに語ってくれました。
うちの馬鹿旦那は毎朝腕立て200回のノルマを自分に課しています。結婚翌朝ですらそのスタイルを貫き通しました。
Sくんには気の毒なことをしたなあと思います。




2005.1.20